なぜ、人は旅に出るのか?-逃避と好奇心から強制的に成長へと変化する-
時代と共に変わっていく旅のスタイルと目的
『旅』には、国内の日帰り旅行から海外旅行、世界一周旅行などさまざまだ。
かつて、スマートフォンやインターネットがなかった時代では、旅とは「未知の世界への冒険」として捉えられていたように思う…。
ところが、最近の旅といえば、予め行き先やホテル、どこで何を食べるか?まで細かく下調べしてから旅立つというスタイルが主流だ。
これは目的地で何をするか?というアクティビティに重点を置いていると言える。そうすると、旅が単なる移動になりつつあると言えるのかもしれない。
旅行は、ただの確認作業にすぎないのか?
ある海外旅行好きの知人が、こんな事を言っていた。「最近の旅は、ただの確認作業にすぎない」
確かに、その通りだと思った。
ネットで目的地を検索した時点で、旅先に何があるか分かるため、ただそれを現地に赴いて確認するだけの作業に成り下がってしまったのである。
全て計画通り、予定調和の旅…。
なんとも魅力を感じないのは筆者だけだろうか
行き先を決めずに放浪するような旅があまり注目されなくなってきたように思う。(放浪旅がいいかどうかは人によると思うけど)
目的地を決めずに放浪する旅の魅力とは
実は筆者も20代の頃は、この「目的地を決めずに放浪する旅」に憧れていた一人なのだ。
有名な旅行小説「深夜特急」に魅了され、自分も同じような体験をしたいと強く思った。
バイトで貯めた、たいして多くないお金とバックパックを背負って、まず大阪から上海までフェリーで渡り、そのままロンドンまでバスや列車を乗り継いで約8ヶ月ほどでたどり着いた。
当時は、スマホで予約してからホテルに向かったり、グーグルマップで到着駅から宿泊先ホテルまでの行き方などは分からない。
そのため、安宿を見つけるということが、まず一つの課題だったし、チェックイン出来たときの安心感は今よりも格段にあった。
そして、この安宿を探し出すという行為そのものが旅の醍醐味の一つだった。でも今はその楽しみが失われたといってもいいだろう。
「苦労して安宿見つけて、時間も労力も無駄だし…一体何がしたいんだ?」という意見もあるかも知れないが、予め宿泊先を決めてから行くよりもワクワク感があったということだけはご理解いただきたい。
なんというか、ある種のゲームみたいなもので、PRGの主人公みたいな気分に浸って、脳内の快楽物質が出ていた(笑)と思う。
また、旅人同士ですぐに仲良くなれる雰囲気が確かにあった。時には異性との出会いも、、。
「旅は道連れ」という言葉がまだ生きていたのだ。
なぜ旅に出るのか?
さて、「なぜ人は旅に出るのか?」と本題に戻って考えてみると、当時の筆者が旅をする目的は、「ただ海外をみてみたいという好奇心」と、「日本にいたくない」というこの2つが大きな理由だったのである。
旅がしたかったというよりも、逃避するための口実として海外を利用していただけと言えるかもしれない。
なぜなら、海外旅行中は街中で職業を聞かれるわけではないし、ブラブラしていても周囲から変な目で見られるということはない。
つまり、「社会不適合者のための隠れ家」としての機能を持っていたわけだ。
ただし、それで終わりというわけではない。その長旅の中で、たくさんの人と出会ったり、貴重な経験をしたり、学んだことが自分の成長につながったと実感していた。
明らかに自信がついたのは間違いない。それはたくさんの経験、また人と違った経験を通じて、アイデンティティを形成できたのだと思う。
アイデンティティがないと、自信を持ちづらいと思う。特に都市部での生活においては。
筆者にとっての旅とは、もともと好奇心と逃避から始まり、その過程で知見を広げることで自己成長することができたのだ。
言い換えると、自己成長を目的としていたわけではないのに、成長させてくれたというハンパない強制力を持っているのが「旅」である。
一旦、その魅力にハマってしまうと、なかなかそこから抜け出せないという、旅には麻薬のような中毒性もあるのだ。
多くの偉人たちも旅をした
ところで、多くの偉人や著名人の多くが旅をしていた。イエス・キリストや仏陀のような偉人や、北斎、松尾芭蕉などの芸術家、モーツァルトのような音楽家、小説家のヘミングウェイも旅をしていた。
そこで、一つの疑問が頭によぎる。「仏陀は悟りを開くため」に旅に出たとされているが、なぜ旅が必要だったのか?
仏陀の生涯は手塚治虫の「ブッダ」に描かれている。
逆にいうと、もし仏陀が旅をしないでいたとして、果たして悟りを開けたのだろうか?
おそらくNOだと思う。
人それぞれ、旅に出る理由があると思うが旅の魅力とは、日常から非日常への脱出(これをループから外れると呼んでいる)、新しい場所を訪れたいという好奇心、あとは物価の安い国で贅沢な体験ができるなど。
あなたの旅には目的がありますか?それとも旅そのものを目的としていますか?
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