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【クレイジー旅行記】ブロガーの話(ロサンゼルス02)

2024.11.3

アメリカのロサンゼルスに滞在していた時のことだ。ブロガーのナカヤマ君が語ってくれた話を思い出した。

『元々、ネットが出来始めの時は、ある種の隠れ家みたいな、オルタナティブ・ロックみたいな存在だったと思うんすよ。いつしかネットの世界がメインストリームになっちゃって…。

これって、ロックが大衆化されたことで、『Rock is Dead(ロックは死んだ)』って言われるようになったのと少し似ていません?

優秀で従順で努力できる人たちがネット界に大勢入ってきたおかげで便利だけど、何だかつまんない感じになってるというか・・・グーグルの検索結果の上位表示を目指して、すべての人がそれを目指す様子は、受験戦争にも似ていると思うんですよ。

戦争という言葉に一瞬ビクッと反応した。彼は早稲田大学を卒業しており、地方のいわゆるFラン大学卒の私からすれば、かなり優秀、秀才だ。

ふと、ナカヤマ君の方に目をやると、「まだまだ話は続きますよ」といった表情をしている。私は続きを促すようにウンウンと頷いてみせた。

というのもブログに関する知識が欲しかったのと、ナカヤマ君が人に考えを語ることに何ら躊躇しない性格であることが分かってきたからだ。

自分より知識のある人から何かを教えてもらうのに、ずけずけと土足で人の内面に上がり込むのは好きではない。

あくまで謙虚な姿勢で、こちらには反論する意図は全くないと思わせるため、ゆっくりと深呼吸をして、私はナカヤマ君が再び口を開くのを待つために、視線を遠くに移した。

「例えば、こんな検索キーワードのブログ記事を書こうとするとします」そう言って、英文が書かれた紙の裏に書き出した。

-今の時代に社会で求められている能力とは?-

これは、読者が社会で求められる能力・人間になろうとする意識の表れですよね。でも、それを追い求めたところに、真のゴールはあるのか?と疑問を持ち始めたんです。

グーグル検索キーワードの奴隷になって書いた文章なんて、つまらないんですよね。

僕の言う、「真のゴール」っていうのは、目先の金銭的な報酬とかじゃなくて、もっと壮大な目標のことです。大袈裟かもしれませんけど、「人類が目指すべきゴール」みたいな感じっすかね。

そう言い放つと、言いたいことを言い切った満足げな表情をしていた。

たしかに、グーグルの評価を気にしない表現のスタイルは、まさに彼の生き方そのものなのかもしれない。

エリートコースから自ら離れた生き方をしている彼が言うのだから、妙に説得力があった。

そのことに気づいてから、ナカヤマ君は優秀なブロガーになることをやめて、自ら体験したアダルト系の旅行記を書きはじめたという。

地元の同級生がほとんどヤンキーで高校すらまともに卒業していない環境で育った私からすれば、早稲田や慶應出身の高学歴に対してどこか「次元の違う世界の住人」のように勝手に思っていた。

しかし、彼の気さくなキャラクターのせいか、そんな「次元の違う世界の住人」とを分断する見えない壁など実際には存在しないのだと気づかされた。

また、そんな優秀な彼が、レールから外れてまで、真のゴールを目指す過程において、「アダルトな旅行記」をツールとして、敢えて選んだことについても私は非常に興味をそそられた。

彼は、早稲田大学を卒業後、会社員を数年で退職し、レールから外れて、自分の生き方を模索しながらフリーランスとしてたくましく生きている。

収入源は、自らが「海外の治験」に参加することや、治験参加者を募り紹介料を得たり、ブログサイトでのアフィリエイト、また株・仮想通貨などから複数の収入があることを明かしてくれた。

中でも、「海外治験」について興味がそそられたので、聞いてみた。日本人がアメリカで行われる治験に参加すると、報酬が1ヶ月で大体100万円程度がUSドルで支払われるのだという。

日本人向けに海外治験を実施しているのはアメリカだけでなく、イギリス、ベルギー、オーストラリア、シンガポールなどの現地企業が定期的に治験を行い、HPや紹介で新しい被験者を募集しているという。

通常、治験では休薬期間が設けられて、一旦治験に参加すると数ヶ月(通常1-3ヶ月)待機する必要がある。

しかし海外治験の場合、国を跨いでいるため、休薬期間を無視して、次から次へと移動しながら、治験で生活することが可能だという。つまりバレなきゃいいのだ。

さらに海外治験を主な収入源としているコミュニティがあり、トップは年間500万円以上の報酬を稼いで優雅に生活しているという。

中でも、アメリカでの治験報酬が最も高く、日本のサラリーマンの平均収入よりも労働せずに稼いでいるという。

そして、アメリカ治験を終えて、大金を手にした男たちは、真っ先に行く場所があるという。それが酒池肉林をそのまま様相した、メキシコ・ティファナ。

彼曰く、『世界で最もクレイジーな場所の一つ』だそうだ。ティファナ。

その、美しい響きの名前が頭に残っていた。