音楽とビジネスの交差点:抽象的概念で磨かれる思考と人脈構築

2024.11.15

音楽を語ること、音楽について思考を巡らせることが、人脈作りやビジネスにどのように生かせるのか?どのような能力が必要か、改めて考えさせられるきっかけがあった。

そのきっかけとは、地元で音楽ライブや祭りのオーガナイザーとの出会いである。

東京から関西の地元に帰ってきた筆者は、なんとか採用されたアルバイトと自宅で一人マックと向かいながら酒を飲むという寂しい生活を繰り返していた。

田舎には独身が気軽に遊べるような場所はほぼ皆無で、都落ちの視線に晒されながら日々を過ごしていた。

そんな短調な日々の中、何か面白いイベントを企画しできないかと考えていた時、父親のツテで祭りの関係者、音響兼イベントオーガナイザーの方と知り合うことができた。

驚くことに、その方は筆者の幼なじみの妹と結婚しており、共通の知り合いも多かった。これも何かの縁だろうと思った。

彼は夜中にわざわざ筆者の住処である山頂の小屋まで車で来てくれた。狭い部屋に上がってもらい、床に座って話を進めた。

いざ話してみると、彼は音楽に非常に詳しかった。音楽好きの人は抽象的な話が好きで、それは音楽そのものが抽象的であるからだ。

幼少期から、音楽は常に身近にあり、過去に聞いた音楽は、当時の自分が感じていた感情を呼び起こし、過去の自分と現代の自分が入り混じるという現象がよく起こった。

音楽は、言葉が存在しなかった時代からのコミュニケーション手段でもあった。現代では、音楽を通じて言語以外の方法で相手を知ることができる。抽象的な概念を言葉にし、イメージを共有することで、人はより深く理解し、相手を承認できる。

山小屋で、音楽イベントや機材、音響に関する彼の知識や共通のつながりについての話を聞く中で、彼の真面目さと慎重さが感じられた。私も音楽イベントの目的を正直に話した。「自殺を防止する」というコンセプトだ。

音響やイベントに関しては初心者の私は、プロの相談役である彼から多くを学びたいと考えた。今後、商工会員、神社、知人、自主主催のイベントなどでお声がけさせてくださいと伝え、暗い夜道の中、ライトを照らして車まで見送った。

初対面でここまで話し込むことはなかったので、不思議な充足感を感じた。音楽を通じて、人間の奥深くにある欲望や知的な概念を言葉に翻訳し、共有できたのだ。

アート思考の重要性が増す中で、同じような商品が乱立し、価格でしか競争できない今の日本社会において、既存のシェアの奪い合いだけではなく、全く新しい価値を創造するための思考として音楽はビジネス分野にも役立つと思う。

音楽の抽象的な要素や感受性は、新しいアイデアや視点を生むための重要なヒントとなり得る。音楽は人とのつながりを作り、友人を作るには最適なツールなのかもしれないと改めて感じた。