文章を書く力を鍛える。日常の些細な出来事を言語化-臨場感を与える-
日頃からたくさんの文章を読むことは、文章を書く力を鍛える上での基本となる。これはアスリートやミュージシャンが日々練習に励むのと同じだ。
そこで、文章を上手に書けるようになるために、日常の些細な出来事を文章にしてみるクセをつけることにした。
実際に試してみると、平凡な日常のあらゆる場面でも文章を構築することができることに気付いた。これは意外な発見だった。
過去の出来事を思い出して文章にする場合、時間が経つにつれて記憶が薄れてしまう。そのため、なるべく早く、鮮明なうちにその日のうちに言語化することを習慣化することが重要だ。
また、文章を書く際には、体調を整え、精神的に落ち着いた状態で行うことが大前提だ。
焦っていたり、体調がすぐれなかったり、睡眠不足だったりすると、文章を考えたり書くこと自体が苦しい作業となってしまうので注意が必要だ。
さて、文章を書く練習を始めてみよう。
しかし、素人がいきなり文豪のような文章を書くことは難しい。そこで、記述テクニックを考えてみた。
そのテクニックとは、文章のベースとなる骨組みをまず作り、後から肉付けしていくやり方だ。
骨組みは実際の行動をベースに記述し、後から思考、描写、修飾語などを追加していくやり方だ。では始めてみよう。
以下にサンプルとして例文を書いてみる。
(A)行動した事を軸に基礎文章を書く
今日、いつものように車を停めて、1000円札をポケットに忍ばせて、富士そばに行った。
自動券売機でカレーうどんを注文。いつもの席を確保して、トイレに入る。トイレから出て席に戻る。
店員が番号を呼ぶので、自分の番号かなと思って慌ててポケットをまさぐり、チケット番号を見ると自分の前の客の注文だった。
「番号の他に品名を呼んでくれたら分かりやすいのにな」と思っていると、店員がそれを察したのか自分の時は「注文番号、カレーうどんのお客様」と呼んでくれた。
この文章を色々といじくり回してみたいと思う。以下、具体的な手法である。
- 修飾語で肉付けする: 骨組みができたら、修飾語を使って文章を肉付けする。
- 人物キャラクターを描写する: 文章に登場する人物の外見や性格、動きなどを描写する。
- 耳から入る情報、音、雰囲気を描写する: 音や雰囲気を文章に取り入れる。
- 数字や時間、色、光、影などを描写する: 文章に具体的な情報を加える。
- 思考や過去体験、思い出を織り交ぜる: 自身の思考や過去の経験、思い出を文章に取り入れる。
- イメージを膨らまる: 例えや比喩を使う。
以上の手法を組み合わせて、出来た文章が以下である。
(B)完成した文章
大雪が降った翌日の東京、虎ノ門駅の近く。時刻は午後7時を少し回った頃だった。いつものように、路肩のコインパーキングに車を停め、1000円札をポケットに忍ばせ、仕事前の腹ごしらえのために富士そばに足を運んだ。
店内入口すぐに設置してある2つの自動券売機のうち、手前の自販機は他の客が使用していた。そこで、奥にある販売機でカレーうどんを注文した。すると、お釣りがジャラジャラと派手に音を立てた。
券を店員に渡し、店内の奥にあるいつもの席を確保した。
店員は30代前半と思しき日本人の男女2人。どちらもメガネをかけており、女性の方はふっくらとした外見をしていた。
女性の方は最近入ったらしく、男性の先輩に負けまいと元気に声を出して店内を明るい雰囲気にしているようだった。
店内で恋愛に発展しているのだろうか?そんな勝手な妄想が頭をよぎった。
トイレに行きたくなったので、トイレに入る。そして、トイレから出て席に戻るとき、ドアを開けた瞬間、別の客と目が合ったが、すぐに視線をそらした。
店内ではいつも演歌が流れ、都会の雑踏の中で日本的な安らぎの場のような雰囲気が演出されていた。
最近、「外国人旅行者が、日本人の食べるときの音が気になる…」というニュースが話題になっていたが、この店ではズルズルと大きな音を立てて、うどんを啜っても大丈夫という安心感があった。
調理を待っている間、ふと、自分が小学生の頃に見たTVドラマを思い出した。主人公が江戸時代にタイムスリップするという話だった。
江戸時代の蕎麦屋に入った主人公は、派手にそばを啜って食べる江戸っ子に対して、はしたないと指摘されるシーンがあった。
そして江戸っ子は一旦は音を立てず、上品にそばを食べるが、「こんな食い方してりゃ、うまくねえじゃねえか」と一蹴りし、すぐにいつものように派手に音を立てながらそばを食うスタイルに戻る。印象的なシーンで今でも覚えている。
そんな思い出にふけっていると、店員が番号を呼び始めた。自分の番号かな?と思って慌ててポケットをまさぐり、チケット番号を見ると、自分の前の客の注文だった。
「番号の他に品名を呼んでくれたら分かりやすいのにな」と思っていると、店員がそれを察したのか、自分の時は注文番号に加えて「B14番、カレーうどんのお客様」と呼んでくれた。
分かりやすかったので、安心して自分もズルズルと音を立てながらカレーうどんをすすった。
いかがだろう?最初のベース文章と比較すると、臨場感のある文章に変化したことがわかる。
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